松久さん[ショーQ ブロンズ]




松久博志さん。

初めてお会いしたのは、かれこれ20年以上前のことになります。 僕は当時某工房に勤めていて、その時の仕事絡み以来ずっとお世話になっている、先生のような存在でもあります。 今でもうちの環境ではちょっと難しい仕事となれば、厚かましくも工房の片隅をお借りして制作させていただいているわけですが、私たちの業界ではひとりではできない作業を協力して行う必要もあったりするので、割と昔から制作場所をシェアするというのはよくあることです。

元々ご実家で営んでいらっしゃった鈑金工場を利用して「ショーQ ブロンズ」という工房を運営しておられます。 溶接作業においては、速度と正確性が求められるステンレス製タンクも、ヘアクラックなし、ピンホール無しで仕上げる技術の持ち主です。

そんなご本人ですが、学生時代に彫刻、とりわけ美術鋳造を学んだという経緯もあり、特に蝋型鋳造(所謂ロストワックス鋳造法)に明るい作家でもあります。






現在は独自に身につけた鈑金や鍛金に近いお仕事を中心になさってますが、「ショーQ ブロンズ」という工房名からもわかる様に、ここには可傾炉(かけいろ)があります。 可傾炉とは、鋳造に使用される溶解炉形式のひとつで、湯(溶けた金属)をくみあげること無く取り分けられるよう炉本体が傾くため、比較的大掛かりな鋳造を可能にする設備です。 つまりここは、本格的なブロンズ鋳造が可能な工房なのです。 残念なことに現在は炉を閉じられていますが、10年ちょっと前までは鋳造を行う工房として機能しており、吹き(鋳込みの現場)のお手伝いしたこともあります。

ブロンズ(青銅とも呼ばれる銅合金)は美術鋳造に触れた人間にとって、湯流れ、強度、適度な切削性、腐食強度、着色など総合的な表現の幅や耐久性など総合的に、他の金属とは比べ難い最高峰の素材といえます。 これはイタリアであってもドイツであっても変わらない認識だと思いますが、現代の彫刻界において使われることはかなり少なくなったのではないでしょうか。

バルブの製造などでよく用いる「砲金(ほうきん)鋳物」として扱われる銅合金に近い地金ですが、銅の価格高騰もあり、それらも他の素材に置き換えられたり、工業系の鋳造においても砲金鋳物は減少しています。 鋳物についてはまた別のトピックとして取り上げたいと考えています。

鋳造とひとことでいっても、美術鋳造は工業系の鋳造とはかなりプロセスが違う点があります。

それがどのようなものかを知る人は近辺では数少なく、その工程を口で説明してもなかなか伝わらないことも多々あります。 そういう意味で、学生時代に鋳金を専攻していた僕とは共有できる経験もあり、話が通じるという意味でも、近辺で貴重な存在なのです。





様々な背景から松久さんは方向を少し変えることを余儀なくされたということになるのかもしれません。

そんな松久さんの仕事場にお邪魔しては、これまで数多くのことを教えて頂きました。

もちろん、まだまだ現役ですが、最近はご自身の年齢や周りの同世代の方を見ながら次の人生についてもいろいろとお考えになられるみたいです。 「ひろせくん、そのうちまたブロンズやらんか」 と仰ってくださるその言葉の奥に、少しもの寂しさみたいなものを感じてしまいますが、

「ぜひ、やりましょう!」

そう答えます。



単なる木の枝に見えますが、ブロンズです。


実は、江戸時代にこの地方(現在の岐阜県瑞穂市)にも「別府細工」という蝋型鋳造の工芸品がつくられていた事実があり、手持ちの文献によれば細工師はたった二人の親子で途絶えたとされています。

承け継ぎ手が無く途絶えたのか、確かなことはわからないようですが、それを少し連想します。(別府細工についてもまた別の機会に・・・)





かつて松久さんがこの場所で蝋型鋳造を行うことを可能にしてきたノウハウは、予めここにあったわけではなく、独自に研究や工夫を重ねて手に入れたものです。

そこがとても重要です。

その技術を承け継ぐことは出来なくとも、そういった独自性を生み出す精神はここで見習っていける、そんな場所が今あることに感謝しています。





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